仕方なく、市販の禁煙パイプをくわえることにしたが、いい大人が子供のようにハッカの味がするパイプをくわえているのはサマにならなかった。 いっそ本物のパイプをくわえようかと思ったが、その当時、私はまだ三十代前半の若造だ。
当時の証券会社というのは(今でもそうかも知れないが)、かなり保守的な体質を持っていて、若手社員が仕事中にパイプでもくわえていようものなら、何を言われるか分からない雰囲気があったので、それは断念した。 そんなこんなで面倒なことが多かったが、とにかく私はたばこをやめた。
やめると思い切ってしまったら、実にあっさりやめられた。 だが、酒だけはそういうわけにはいかず、今でも夜な夜なグラスを傾けている。
これは死ぬまで変わることはなさそうだ。 上場企業は決算が終われば、投資家に対して業績の報告書を発行する。
これはどの国でも同じだ。 それは、日本なら有価証券報告書であり、英米ならア二ュアル・レポート(年間事業報告書)日本の企業と欧米の企業を比べ、どこが一番違うかと聞かれれば、「それは情報公開の姿勢だ」と祷跨なく私は答える。
二十年近く、日本と欧米の企業に接してきた私が言うのだから間違いである。 だが、日本で一般の投資家が、有価証券報告書を手に入れるのは容易ではなかった。
官報の販売店に行くか、企業に直接請求するしかなかったからだ。 一部の書店でも扱っているが、その数は少ない。

最近は、インターネットのホームページで、財務情報を開示する企業が増えたので、だいぶ状況は改善した。 しかし、企業によって開示内容は千差万別で、決算短信と呼ばれるきわめて簡略な資料だけでお茶を濁している例も少なくない。
二○○四年六月からは、金融庁のホームページで上場企業の有価証券報告書を閲覧出来ることになった。 これは大きな前進といえよう。
ただ、一般の投資家が、有価証券報告書だけで企業の現状を把握するのは難しい。 多くの補足資料が必要だが、日本の企業のホームページはそれが貧弱だ。
有報とは有価証券報告書の略称で、金融業界の用語である。 一方、イギリスの企業は、投資家に対応する広報態勢がしっかりしており、一般の投資家にもアナリストにも親切に対応する。
株主でなくても、電話一本でアニュアル・レポートを郵送してくれる。 「貴社の財務を調べるので過去三年間のアニュァル・レポートを至急送ってください」と電話で頼んで、断られることはまずない。


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